★ 会員は学会誌最新号の丸ごとファイルを会員専用ページで閲覧 & ダウンロードできます。 最新号の各論文・講演概要の個別ファイルはこのウエブサイトにて来年度(2027年) 4月1日に一般公開される予定です。
NEW
第24号(2025)目次(日本語・英語)
PDFファイル 1.1MB
学会誌『日本語とジェンダー』第24号(2026年3月15日発行)
論文・講演の要旨(冒頭の一部)
【研究ノート】
小学生が認識する教師のジェンダー・イメージ ―「指示・促し」の表現からの捉え― -------- p.1
渡部 孝子(群馬大学 教授)
髙橋 洋介(群馬大学共同教育学部附属小学校教諭)
菅原 和人(群馬県伊勢崎市立第三中学校教諭)
要旨
人は、いかなる時点から「男性とは」「女性とは」といったジェンダー・バイアスを形成し始めるのだろうか。後天的に社会の中で獲得されるジェンダー・バイアスは、幼少期から接触するテレビ番組などのメディア、絵本、 漫画、さらには教科書のイラストや写真といった視覚情報や家庭、学校、地域のコミュニティなど周囲で使用されている言葉・表現を通じて、徐々にステレオタイプ的なイメージが構築され、固定化されていく。さらに中村(2010)は、ことばとジェンダーを考えることについて「人間の性に関して私たちが当たり前だと信じていることは、言語によって語られることで常識になったと考えられているから」(p.8)だとしている。日常的に使用される言語を無意識的に取り込みながら、その背後にある「当たり前だと信じられている」文化的規範に晒されることで、ジェンダー観は強化される。
現代日本社会においては、LGBTQ に関する認識や理解が進展し、学校教育においても人権の観点から多様な性の在り方を学ぶ機会が増えてきている。....
【書評】
『ことばに潜むジェンダー 学校・本・テレビ・日常のなかのもやもや』
(遠藤織枝編著、明石書店、2025年)-------- p. 15
斎藤理香(ウェスタン・ミシガン大学教授)
1.ことば(日本語)とジェンダ―研究への誘いざない、その変遷
本書は、ことば(日本語)とジェンダーとのかかわりを様々な事例を通して明らかにする「ことばとジェンダー研究」について紹介した本である。「ことばとジェンダー」ではなく「ことばとジェンダー研究」だと評者が考えるのは、紹介されている一つひとつの事例すべてが、執筆者の問題意識によってテーマ化され詳細に分析されて、単なるエピソード紹介ではなく、何が問<題なのか、それがどう解決され得るのかについての方法や展望も含まれているからである。こういうアプローチの書物を、論文集と銘打ってなくとも、広い意味で「研究」の本だと評者は思うわけである。ただし文体だけを見ると、全体が敬体文、すなわち「です・ます調」で書かれており、一般読者にとって身近でわかりやすい読み物になるようにという編著者や出版者の意図は明確である。「ことばとジェンダー研究4 4 」の本だと声を大にしては言わない、そんな素振りが見え隠れしている気もする。
【第24回年次大会 基調講演 要旨】
広告表現とジェンダー -------- p.25
瀬地山 角(東京大学大学院総合文化研究科教授)
ここ数年、企業のCM や自治体のPR 動画が炎上し、メディアに取り上げられることが増えている。その背景にやはりインターネット、SNS の普及があるのは間違いないだろう。昔はテレビを見ていないとCM が見られず、問題となったCM を見て録画すること自体が難しかったのに対し、今は誰でも動画にアクセスでき、繰り返し見ることができるようになった。
CM や動画を見て抱いた不快感も表明しやすくなり、その不快感に対して賛同や共感を集めるしかけもネット上に生まれている。一人の不快感や嫌悪感、疑問はネットを介することであっという間に広がり、企業や自治体も無視できない大きな声となる。
炎上したCM にも賛否あり、筆者自身、見ていて「ユーモアとして許容できるのではないか」と思うものも少なくない。表現物は受け手によって反応は分かれるものなので当然なのだが、なかには看過できないものもある。
筆者の場合、広告が炎上するたびに取材を受けることが多くなり、「またか」と思ってコメントしているうちに、....
【第24回年次大会 パネル・ディスカッション 要旨】
メディアに表出する自称詞としての「おばさん」の現在地 -------- p.44
鹿島千穂(実践女子大学専任講師)
1.はじめに
「おばさん」ということばは、単に中年の女性をさすだけでなく、「蔑称」や「自虐」といったニュアンスを帯び、差別語として認識されることもある。しかし昨今、メディアに出演する「おばさん」当事者の中年女性著名人たちが、このことばをポジティブに使用し始めている。パネル発表では、差別語としての「おばさん」を概観しつつ、メディアに表出する複数の使用事例を提示し、「おばさん」のもつ意味が変容する可能性について論じた。
2.おばさんの定義と先行研究
広辞苑第七版によると、「おばさん(小母さん)」とは「広く、大人の女性を呼ぶ語」である。NHK 放送文化研究所の調査(2017:57)では、「おばさん」と呼ばれ始める年齢は44歳7か月、呼ばれなくなる年齢が60歳3か月であることから、一般的に「おばさん」とは40代後半から50代の中年女性をさす語と考えられる。
定義としては単に中年女性をさす「おばさん」であるが、実際は「蔑称」や「自虐」といった使われ方をすることも多い。例えば、....
メディアスポーツが構築することばとジェンダー ------- p. 48
岡本能里子(東京国際大学大学 教授)
1.はじめに
本発表では、これまで蓄積されてきているメディア・リテラシーとジェンダー研究、スポーツとジェンダー研究における言説を読み解き、メディア・スポーツ研究の観点から、女性アスリートに対して構築される「女らしさ」と「強さ」とのダブルバインドの状況を明らかにする。それを受けて、女性アスリートのインタビューを通して、新たな「女性らしさ」が構築されつつ<ある状況を報告する。その上で、チェンジエージェントとしての日本語ジェンダー研究の今後の可能性と課題を共に考えてみたい。
2.メディア・リテラシーにおけるジェンダー研究
メディア・リテラシー研究の中で、ジェンダー研究は、長く中心的な研究領域となっている。その理由は、岡本(2013:24)でも指摘したとおり、「メディアはすべて構成されたものであり、メディア表現は現実を構成し、メディアはものの考え方(イデオロギー)と価値観を伝え、社会的・政治的影響力<をもつ」(カナダ・オンタリオ州教育省が提示している「メディア・リテラシーの8原則」より)からである。中でも....
メディアのジェンダー表象と「中動態」的リテラシー -------- p.51
斎藤理香(ウェスタン・ミシガン大学教授)
本発表では、パネルのディスカッサント(討論者)の立場から、パネリスト3名の発表概要の注目すべきポイントを挙げ、ディスカッションを講じていく端緒とした。パネリストはそれぞれ固有のトピック・アプローチ・分析を通じ、メディアにおけるジェンダー表象の問題をあぶりだし、メディアからの発信をどのように受け止め解釈していくかというメディア・リテラシーにかかわる問題を提起している。ここでは、これらの問題意識に学びながら、ジェンダー表象とメディア・リテラシーに関するもう一つの見方を提示した。パネル発表では便宜上、メディアの送り手・受け手という二元論的視点から 解説と議論を進め、その後、最初の想定を「覆し」、表題にある「中動態」概<念を援用し、メディア本来の「受け手」はどのように生成され、またその立ち位置はどのように捉えられるのか、そんな「受け手」がジェンダー表象にどう向き合い、どう評価すればいいのかについて試論を講じた。
放送分野におけるメディア・リテラシーについて、総務省では....
【第25回年次大会 研究発表 要旨】
『進撃の巨人』におけるキャラ語の一考察 ―男ことばを話すユミルの役割― -------- p.55
稲永知世(佛教大学准教授)
本発表は、役割語、およびキャラクター言語(Kinsui & Yamakido 2015)の観点から、漫画『進撃の巨人』の主要登場人物の1人ユミル(主人公エレン・イェーガーと同期の第104期訓練兵団卒業生;少女)が使用する男ことば(および、その他の役割語)を分析し、これらの言語使用が社会的規範への遵守、そこからの逸脱を示していることを考察する。とりわけ、ジェンダー(および、セクシュアリティ)に関わる一般的な固定観念を覆す存在であるユミルが使用する男ことばの使用は、ユミルが社会的規範からは逸脱しているものの、偽らざる自分を表象していることを検証する。また、キャラクター言語の使用は、「物語を発展させる上で非常に重要な特性」(Kinsui & Yamakido2015: 39)となる場合があるが、社会的に逸脱したユミルの言語使用がさまざまな固定観念を攪乱させるとともに、当該漫画における物語上の展開にも寄与していると主張する。
これまで、巨人と人類の境界といったさまざまな観点から....
メディアが描く性の多様性 ―日本と中国のドラマにおける性的マイノリティ男性の言葉遣い― -------- p.60
賈 伊明(名古屋商科大学専任講師)
1.はじめに
本発表は、日本語と中国語の映像メディアに登場する性的マイノリティ男性キャラクター(ここでは、性的指向が男性を対象とする「ゲイ」と「バイセクシャル」、または身体が男性であることに違和感を持つ「トランスジェンダー」に該当する)の言語表現に注目する。特に、日本語の終助詞および中国語の語気助詞の使用を通じて、言語がいかにしてジェンダーを構築し表象するのかを明らかにすることを目的とする。フィクションの言語は現実を直接反映するものではないが、視聴者にとってのジェンダー認識を形成する社会的機能を有しており、登場人物の話し方はしばしばジェンダー・アイデンティティの象徴として設計されている。
2.分析対象と分析方法
日本では、2000年代からテレビなどの主流メディアに「おネエキャラ」や「おネエ系タレント」と呼ばれる性的マイノリティ男性が多く登場するようになった。一方、中国においては....
マウンティングは女性に特有か? -------- p.64
数納 風香(北海道大学大学院 博士後期課程学生)
1.はじめに
本発表は、マウンティングという語につきまとうジェンダー・バイアスを批判的に読み解くことによって、自慢・マウンティングの包括的分析の一出発点を提示するものである。
2.「マウンティング」という語の一般化と社会的位置付け
「マウンティング」はもともと、サルなどの動物が行う擬似交尾行動を指す動物行動学の用語である。2010年代以降、瀧波・犬山(2014)をきっかけのひとつとして「相手に対する優位性を示す、あるいはほのめかすような言動」を意味する語として広く普及した。また、相手に対する攻撃性や、優位性誇示の意図を隠匿することが特徴とされることもある。Twitter(現X)から用例を収集した市川(2019)では以下のようなものが例示された。これは、「身<長低い子」の発話をマウンティングであると解釈した書き手が、相手に報復<をしたことを語ったものである。....
Q&A コミュニティにおいて「ジェンダー」はどのように語られているか ―質問と回答に対する計量テキスト分析から― -------- p.68
銭坪玲子(鎮西学院大学教授)
日本最大級のQ&A コミュニティの一つである「Yahoo! 知恵袋」は、インターネット上で参加者同士が知識や知恵を教え合う知識検索サービスである。2004年にサービスが開始され、2024年4月3日時点で登録利用者数5,200万人、質問総数2億8,000万件、回答総数6億5,000万件以上とされる。カテゴリーは、大分類で「エンターテインメントと趣味」や「暮らしと生活ガイド」、「健康、美容とファッション」、「生き方と恋愛、人間関係の悩み」等、計18個が設けられており、中分類や小分類を含めると、約700個のカテゴリーに分類される。投稿者は投稿時に、これらの中からカテゴリーを選び、質問を投稿する。
本研究の目的は、「Yahoo! 知恵袋」のQ&A の投稿データのうち、「ジェンダー」という言葉を含む投稿について計量テキスト分析を試み、「ジェンダー」の語られ方について把握することである。分析の対象は、「ジェンダー」という言葉が用いられたQ&A(「解決済み」のものに限定)であり....
Copyright © 2026 The Society for Gender Studies in Japanese
All rights reserved