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学会誌5号:研究ノート(簗・大木・小松)

ジェンダーの視点から見た断りのEメール

簗 晶子・大木理恵・小松由佳

 
要約:断りのEメールで使われる男女差のある表現を調べる目的で、メール機能を使って日本語母語話者を対象にアンケートを行い、意味公式を単位として分析を 行った結果、<謝罪>と<断り>で使われる表現に男女差が現れた。<謝罪>では、男女共に「申し訳ない」の使用が最も多い。しかし、女性では「申し訳あり ませんが」のように文頭で使う人が多く、男性では言い切りの形で使う人が多かった。<断り>では、女性は文末緩和表現を使用して可能性・能力を否定すると いう形で婉曲に断りを述べ、男性は断りの意思表明をしたり断定的な表現で可能性・能力を否定したりする傾向が見られた。また、意味公式の出現順序には男女 共通の型があることが明らかになった。これらの分析結果から、断りのEメールには表現の使用について男女に特徴的な書き方があることがわかった。このこと から、Eメールの書き方を日本語学習者に教える際には、男女に偏りのない表現を教えるとともに、実際に使用されているジェンダー表現を紹介することを提案 する。
 
キーワード: Eメール、意味公式、断り表現、謝罪表現、断りの強さ、ジェンダー表現
1. はじめに
Eメールが普及している現在、外国人日本語学習者が日本語でメールを書く機会も増えている。筆者らは日本語教育においてEメールの書き方を指導する際、 基本的に男女ともに使用できる表現を提示するという方針をとっている。ジェンダー表現は使い分けが難しく、表現の仕方次第では受け取る人に違和感や不快感 を与えてしまう場合があるためである。しかし、実際に日本語母語話者が書くメールには男女差のある表現も使われており、学習者がそのような表現を使った メールに接する機会もある。彼らが、受け取るメールのニュアンスをよりよく理解し、またメールを書く際にはより自分にふさわしい表現を意識的に選択する力 をつけることができるように、時間が許せば授業の際に男女差のある表現も提示することが必要だと思われる。そのためには、実際のメールの男女差がどのよう なところに現れているか教師が把握しておく必要がある。そこで、Eメールにおける男女差を見る目的で調査を実施した。
 
中間集計注1では「断りメール」の他に「誘いメール」「依頼メール」についてデータを収集したが、「断りメール」に関しては、断りの強さ、謝罪表現の選 択、謝罪表現の位置など複数の項目についてさらに詳しく見る必要があると判断した。そこで、本稿は「断りメール」を対象とし、さらにアンケートをとって データを増やした上で、ジェンダー表現の使用傾向を調べる。
 
日本語母語話者・外国人日本語学習者の断り表現を扱った先行研究には、生駒・志村(1993)および藤森(1994)のプラグマティック・トランス ファーに関するもの、横山(1993)のフォリナートークに関するもの、熊井(1992)の断りの談話行動に関するもの等がある。また、断り・詫びとジェンダーとの関連については林(1999)があるが、以上はすべて会話を対象にした研究である。Eメールにおける断り表現とジェンダーとの関連についての研 究は管見の限り見あたらない。ここでは、藤森の「『誘い』に対する『断り』行為に見られる意味公式の種類」に沿い、Eメールにおける断り表現とジェンダー の関係を調べる。さらに、分析の結果からEメールの書き方の授業でどのようなジェンダー表現の提示の仕方が可能かという点についても考察したい。
2. 中間集計の結果
2004年3月から5月にかけて、「誘いメール」「依頼メール」「断りメール」の3種類を延べ132通収集した。データ収集の方法は、インターネットの メール機能を利用し、調査協力者1人につき状況を設定した3種類のメールをこちらから出し、それぞれのメールに返信してもらう形をとった。調査協力者は筆 者らの知人で、全員が日本語母語話者、年代は男女共20~40代である。3種類のメールの状況設定は、「同僚をホームパーティに誘う」「同僚にビデオ借用 の依頼をする」「同僚から依頼された外国人観光客の案内を断る」というものであった。
 
それらのメールを分析した結果、「誘いメール」では、誘いの形式が大きく分けて2種類(「遊びに来てください」等の依頼の形と、「遊びに来ませんか」等の 質問の形)あることがわかり、これらの形式の使用の男女差を見たところ、質問の形で誘っているものは男性よりも女性に多いという結果が出た(女性33%、 男性15%)。誘いの形式以外では、相手の都合を聞くかどうかに関して男女差があった。(男性の50%が相手の都合を聞いているのに対し、女性は29%で あった。)
 
「依頼メール」で使用された依頼表現にはばらつきが多く、男女に特徴的な傾向は見られなかった。しかし、依頼する前の確認(相手がビデオを持っているかどうか)については、男女差が現れた。(女性の95%が確認を行っているのに対し、男性は61%であった。)
 
「断りメール」では、まず使用されている断り表現の強さについて、断定した言い方かどうかを基準に男女差を見たところ、断定を避ける表現を選ぶ人は女性が 多かった(女性45%、男性15%)。また、謝罪表現については次の3点が明らかになった。①文末で使われた謝罪表現のうち「ごめんなさい」(「ごめん ね」「ごめん」を含む)は主に女性に使われており(60%)、男性には少ない(15%)。②男性は文末に謝罪表現を使う人が女性に比べて少ない(女性 80%、男性65%)。③謝罪表現を複数回使用するのは女性のほうが多い(女性45%、男性15%)。
3.データ収集方法及び分析方法
データ収集は、引き続き筆者らの知人に協力を願い、インターネットのメール機能を利用して、こちらから出した状況設定のメールに返信してもらうという形をとった。状況設定のメールの文面は次の通りである。
 
状況:同僚から次のような内容のメールが来ました。
「来週一週間、韓国から友達が来る。自分は仕事の都合で毎日は付き合えない。そこで、できたら一日だけでも案内してもらいたい。その人は日本語ができる。」     
 
このメールに「断りの返事」を書いてください。「同僚」がどんな人かの想定はお任せします。  同僚との親しさや、年齢差等をはっきり指定しなかったのは、丁寧体の文や普通体の文に偏ることなく、なるべく多様な表現を集めたかったからである。調査協 力者は、男性50名、女性48名で、いずれも20才以上の日本語を母語とする社会人である(表1)。使用したデータ数が収集したデータ数よりも少ないの は、送られたメールの中に英語で書かれたものや、依頼を断っていないものがあり、それらを分析の対象から除外したためである。
 
本稿では、依頼に対する断りのメールで使われる表現の男女別の使用状況を、意味公式注2を分析単位として調査分析する。ここでは藤森(1994)の分類 に修正を加え注3、「理由」「謝罪」「断り」「代案」「関係維持」の5種類を取り上げる。丁寧体の表現・普通体の表現は区別せず、意味公式の分類の中にま とめて入れることとした。以下の①~③に焦点をあて 1)そこに男女差があるか、2)あるとすればどのような違いかを、観察する。(以下、文中では意味公式 を< >で示すこととする。)
 
① 意味公式の出現数と出現順序
② <謝罪>で使われる表現の種類と出現位置
③ <断り>で使われる表現の強さ
4. データ分析
4.1. 意味公式の出現数と出現順序
 
4.1.1. 意味公式の分類
 
まず、依頼に対する断りのメールで使用される基本的な意味公式である<理由><断り><謝罪><代案><関係維持>を取り上げ、メールの本文がどのように構成されているかを調べた。以下にそれぞれの意味公式の例をあげる。
 <理由>:時間がとれませんので/仕事があるので 
 <断り>:案内できません/手伝えそうにないな・・・ 
 <謝罪>:すみません/申し訳ない 
 <代案>:○○君あたりはどうでしょう/私の弟に声をかけてみますが・・・ 
 <関係維持>:又こういう機会があったら、連絡ください/では、またメールください。
 意味公式の分類例:<謝罪>大変申し訳ない。<理由>自分は人見知りが激しくて、初対面の人とは気まずくなってしまうので
  <断り>辞退させてください。 <関係維持>また次の機会に・・・。
         
 
「断り」における意味公式の出現数と出現順序についての研究には、横山(1993)の日本語母語話者の「断り」の発話行為に関するものがある。そこでは 「母語話者間の応答について見るなら、応答件数80件のうち約半数の37件において、1.『言い訳』、2.『断り』の順序が見られる。しかし、それとなら んで目立つのは『断り』の意味公式が存在しない場合である。(中略)『言い訳』と『陳謝』の組み合わせが半数を占めるが、それらの順序に関しては一定の型 は見られない。」と述べられている。
 
4.1.2. 意味公式の出現数
 
使用されている意味公式を、延べ数で見ると表2のようになった。<謝罪>や<理由>および<断り>の延べ数がメールの数よりも多いのは、1つのメール中 に複数回出現するためである。<代案>と<関係維持>は他の意味公式と比べて男女とも使用数は少なかったが、<代案>の出現が男性よりも女性の方が多かっ た。<謝罪>については、表3からわかるように出現延べ数は女性のほうが多い(女性62、男性50)。しかし、<謝罪>を使用した人数で見ると、男性が若 干多い(女性47中40、男性46中42)。1つのメールにおける平均謝罪回数は、男性が1.19回に対し女性が1.55回であった。女性のほうが謝る人 数は少ないが、謝る場合には1つのメールで複数回謝っていた。林(1999)では、「詫び表現の出現回数については、ばらつきが少なく、男女間に大きな差 も見られない。」と述べられているが、Eメールではやや差が見られるという結果になった。
 
また、出現数が多かった<理由><断り><謝罪>の3種類について、これらすべてが含まれるメールの数を調べたところ、男性では46中38 (82.6%)、女性では47中33(70.2%)と男女共高い数値を示した。依頼に対する断りのメールでは、男女の差なく<理由><断り><謝罪>の意 味公式が重要な構成要素であると言える。横山(1993)では、『断り』の意味公式が存在しない場合が目立つとされていたが、会話と違いEメールの場合は <断り>を明記することが多いということがわかった。
 
4.1.3. 意味公式の出現順序
 
5つの意味公式<理由(C)><断り(R)><謝罪(A)><代案(P)><関係維持(K)>の出現パターンをみたところ、全部で43種類あった。男女 別に見ると、女性は、30種類(例:CA, CRA, CRP, ACRAKA等)、男性は22種類(例:CARK, RA, ARCKK等)あった。注4 
 
本稿では4.1.2で述べた重要な構成要素である<理由(C)><断り(R)><謝罪(A)>の意味公式の出現順序に、男女に特徴的なパターンが検出で きるかどうか調べた。その結果、CとRとAの組み合わせパターンは、全部で6種類(CRA, CAR, RAC, RCA, ACR, ARC )あるが、男女ともACRあるいはCRAのパターンをとるものの割合が非常に高いことがわかった。
 
C、R、A の全てが含まれているメールの数は男性が38、女性が33である(図1)。ACR の中には、ACRPやACCRなどのパターンも含まれている。CRAの円とACRの円の重なり部分は、A→C→R→Aという順番での出現順序を表している。C、R、A全ての意味公式を使った人の中で、CRA、ACRあるいはACRAという順番をとった人は男性では96.8%(38人中33人)、女性では 87.9%(33人中29人)と、とても高い出現率であった。それ以外のパターン(RAC, RCA, CAR, ARC)は、男性で5人(13.2%)女性は4人(12.2%)ととても少なかった。また、CRAとACRの重なりの部分(ACRAの部分)とACRのみ の部分を比較してみると、ACRの方が格段に少ない。これは、ACRAというパターンをとる人がACRのパターンをとる人よりも多いことを表している。こ のことから、最初に謝った人は次の文例のように最後にももう一度謝る傾向があることがわかる。
 
メールの文例:ごめん。できれば案内してあげたいんだけど、
        <謝罪>
        来週はちょっと忙しくて時間とれそうにないんだ。
          <理由>         <断り>
        本当にごめんね。
          <謝罪>
 
以上のことから、依頼に対する断りのメールにおける<理由><断り><謝罪> の出現には<理由>→<断り>→<謝罪>あるいは、<謝罪>→<理由>→<断り>→<謝罪>の順序が非常に多く、男女差はないことがわかった注5
 
4.2. <謝罪>で使われる表現
 
<謝罪>で使われる表現に注目し、分類を行った。使われた謝罪表現は、大きく分けて次の4種類であった。
 
①申し訳ない:大変申し訳ありません/申し訳ない 等 (男性29、女性28)
②ごめんなさい:ごめんなさい/ごめん/ゴメン 等 (男性9、女性22)
③すみません:すみません/すいません/すまない 等 (男性8、女性6)
④その他:悪い/あしからず/心苦しい 等 (男性4、女性6)  
 
①~④の男女別の内訳は図2の通りである。男女とも、「申し訳ない」と「ごめんなさい」の2種類で謝罪数の大半を占めていた(女性62中50、男性50中 38)。女性は「申し訳ない」と「ごめんなさい」の使用頻度にあまり差がない。一方男性は「ごめんなさい」よりも「申し訳ない」の方を多用している。しか し、この結果の統計的信頼性を得るためには、さらにデータを収集する必要があると思われる注6
 
次に、この2つの表現の出現位置(「文頭」「文中」「文末」「一文」)を男女別に集計した(図3)。「申し訳ない」は、男性が「一文」で多く使い(女性 4、男性8)、女性が「文頭」で多く使っている(女性14、男性9)。「ごめんなさい」は男女共に「一文」で使うことが多い(女性22中14、男性9中 8)。
 
林(1999)では、詫びの表現類型として、「申し訳ありません」グループの使用頻度が他を圧して高く、それに続くのが「すみません」グループであると 述べられている(男女差には言及されていない)。林の調査は、「目上の人に約束の変更を依頼する」という場面についてのものなので、状況設定は異なるが、 「申し訳ありません」が最も多く出現するという点は本稿の調査も同じ結果になった。「ごめんなさい」は、目上に対しては使用しにくいため、林の調査には出 現していない。「ごめんなさい」の使用傾向をより詳しく見るためには、今後、普通体のメールと丁寧体のメールを分けて収集・分析する必要がある。
 
4.3. <断り>で使われる表現
 
断り表現の強さに関しては、会話行動について次のような研究が行われている。熊井(1992)は、断り行動における「言いさし」が表現をソフトにし、断り 行動が引き起こしうる摩擦をうまく緩和している、と述べている。また、生駒・志村(1993)は日本語母語話者と日本語学習者の断りを比較し、学習者が 「直接的な断り」を多用すると指摘しているが、この「直接的な断り」とは本稿で<断り>の意味公式としているものであり、その中で使われる表現の強さに焦 点を当てた分析は行われていない。Eメールにおける<断り>の強さを男女別に分析した先行研究は見られないようである。
 
ここでは、<断り>で使われている表現の強さを男女別に分析する。断り表現においては、「直接的な意志表現」を用いるか、「可能性・能力の否定」という 形をとるか、また、同じ「可能性・能力の否定」でも、断定的に述べるか、あるいは文末緩和表現を加えるかによって、受ける印象が大きく異なると思われる。 このため、本稿では、メールに使用された<断り>の表現を、(a)断りの意志表明、(b)可能性・能力の否定(断定的表現)、(c)可能性・能力の否定 (非断定的表現)、の3つに分類した。分類基準と例は表4の通りである。 上記の基準で<断り>を男女別に分類したところ、図4のような結果になった。男性の場合、(b)可能性・能力の否定(断定的表現)が52.9%(27 人)と過半数を占め、次に(c)可能性・能力の否定(非断定的表現)が35.3%(18人)で続いた。(a)断りの意志表明は11.8%(6人)と少な かった。女性の場合は、(c)可能性・能力の否定(非断定的表現)が過半数の53.3%(24人)、次いで(b)可能性・能力の否定(断定的表現)が 40.0%(18人)であった。(a)断りの意志表明は、6.7%(3人)と、非常に少なかった。(a)断りの意思表明と(b)可能性・能力の否定(断定 的表現)をまとめて「強い断り表現」、(c)可能性・能力の否定(非断定的表現)を「婉曲な断り表現」として男女差を見たところ、男性は「強い断り表 現」、女性は「婉曲な断り表現」を選ぶ傾向がみられた注7
5.まとめと課題
本稿では、断りメールの意味公式に着目し、その出現数・順序と、<謝罪>および<断り>で使われる表現について、男女の違いを調査・分析した。その結 果、男女それぞれに次のような傾向が見られた。女性の場合、<謝罪>で「申し訳ない」「ごめんなさい」という表現をよく用い、「申し訳ない」を使用する場 合は文頭に置く。<断り>では、断定を緩和する「(でき)そうにない」「(でき)ない感じです」等の文末表現を用いて、可能性・能力を否定する。男性の場 合、<謝罪>で「ごめんなさい」や「すみません」よりも、「申し訳ない」を多用する。<断り>では断りの意思表明をするか、断定的な表現を用いて可能性・ 能力を否定する。また、男女共に<理由>→<断り>→<謝罪>あるいは、<謝罪>→<理由>→<断り>→<謝罪>の順序で依頼に対する断りのメールを構成 する傾向があることが明らかになった。
 
授業でEメールの書き方を教える際、教師はこのようなジェンダーによる傾向を把握した上で、学習者のニーズに応じて様々な表現を提示し、学習者のより適 切な選択を促す必要がある。基本的には男女共通に使える表現を教えるが、学習者がジェンダー表現に関心があり、ニュアンスの説明を理解できるレベルであれ ば、ある程度「男性に多い表現」「女性に多い表現」を提示してもよいと思われる。例えば、断り表現として、断定的なもの及び断定を緩和する表現を用いたも の両方を、ニュアンスの違いを説明しながら提示するなどである。しかしその際は、「男性に多くみられる表現」であってもそれは必ずしも「男性しか使っては いけない表現」「女性は使えない表現」ではなく、相手に与える印象の違いであることを伝え、学習者に選択させることが必要である。Siegal and Okamoto(2003)によると、年齢・地域・職業などさまざまな要因により、日本語教師の間でもジェンダー表現に対する意識のばらつきが見られるこ とが指摘されている。従って、ジェンダー表現の規範意識には個人差が大きいことを教師自身が自覚し、教師個人の意識にとらわれない指導をすることも必要だ と思われる。
 
本稿は「断りメール」で使用される表現のバリエーションを観ることを重視したため、丁寧体と普通体のメールを分けて収集・分析することはしなかった。しかし、「ごめんなさい」などの謝罪表現の男女による使用傾向を明らかにするためには、今後データ数を増やし、丁寧体と普通体に分けた分析をすることが必要 だと思われる。
 
謝辞 日本語母語話者のEメール文例収集にあたり、98人の友人・知人にご協力いただきました。記して心より御礼を申し上げます。
 
  1. 中間集計については、日本語ジェンダー学会第5回年次大会(2004年6月20日)にて発表した。本文に戻る
  2. 意味公式とは、人がある目的を持った言語表現をする(本稿では「依頼を断る」)時に使う言葉の単位をその意味内容によって分類したものである。例 えば、「ごめん、その日は先約があって、、、すみません。」という文は 「謝罪」「理由」「謝罪」という意味公式で成り立っていると分析する。謝罪表現は用いられ方によって、複数の意味や機能を有するが、それらはコンテキスト に強い影響を受ける。そこで本稿では、言葉の表面上の意味で分類したほうが学習者に提示したときに分かりやすいと判断し、「謝罪」と いう一つの意味公式として扱うことにした。本文に戻る
  3. 藤森(1994)は、「『誘い』に対する『断り』行為における意味公式」を、①結論、②弁明、③詫び、④代案、⑤関係維持、⑥共感、⑦感謝、⑧間 投詞的表出、⑨ためらい・反復、⑩相づち、の10種類に分類している。このうち⑥⑦は本稿が対象とする「依頼に対する断り」ではほとんど使われない。また ⑧~⑩は会話表現であるためEメールには出現しない。そのため本稿では①~⑤を扱うこととしたが、①結論と②弁明は、より分かりやすく一般的な用語を使用 したいという考えから、それぞれ<断り><理由>という名称に変更した。本文に戻る
  4. CAは、C <理由>の次にA <謝罪>を述べているという意味。同様にCARKは、C→A→R→Kつまり、<理由>→<謝罪>→<断り>→<関係維持>の順でメールが構成されているという意味。本文に戻る
  5. χ2検定を行ったところ、男女間でのパターンの偏りは有意ではなかった(χ2(3)=2.159, n.s.)。本文に戻る
  6.  謝罪表現の男女による表現選択の差を見るために、χ2検定を行ったところ、男女間での偏りは有意ではなかった(χ2(3)=4.93, n.s.)。本文に戻る
  7. χ2検定を行ったところ、男女による差は有意傾向であった(χ2(1)= 3.16,.05< p<.10)。本文に戻る
 
参考文献
  •  生駒知子、志村明彦(1993)「英語から日本語へのプラグマティック・トランスファー:「断り」という発話行為について」『日本語教育』79号、pp41-52
  • 熊井浩子(1992)「留学生にみられる談話行動上の問題点とその背景」『日本語学』第11巻、pp.72-80
  • 林明子(1999)「会話展開のためのストラテジー -「断り」と「詫び」の出現状況と会話展開上の機能-」『東京学芸大学紀要代2部門 人文科学』50 pp.175-188
  • 藤森弘子(1994)「日本語学習者にみられるプラグマティック・トランスファー -「断り」行為の場合-」『名古屋学院大学日本語学・日本語教育論集』第1号、pp1-19
  • 横山杉子(1993)「日本語における、“日本人の日本人に対する断り”と“日本人のアメリカ人に対する断り”の比較 –社会言語学レベルでのフォリナートーク-」『日本語教育』81号、pp141-151
  • Meryl Siegal & Shigeko Okamoto (2003) ‘Toward Reconceptualizing the Teaching and Learning of Gendered Speech Styles in Japanese as a Foreign Language’, Japanese Language and Literature, Volume37, pp49-66
図・表
表1 データ数本文に戻る
  女性 男性
収集データ数 48 50
使用データ数 47 46
表2 「断り」メールにおける意味公式の出現延べ数本文に戻る
  <理由> <断り> <謝罪> <代案> <関係維持>
女性(47名) 53 45 62 10 12
男性(46名) 51 51 52 4 13
 
表3 <謝罪>の数と使用人数本文に戻る
  <謝罪>の延べ数 <謝罪>を使用した人数 1つのメールにおける平均謝罪回数
女性(47名) 62 40(85.1%) 1.55回
男性(46名) 50 42(91.3%) 1.19回
 
図1 <理由(C)><断り(R)><謝罪(A)>の出現パターン本文に戻る
 

 
図2 謝罪表現の種類と出現頻度本文に戻る
 

   図3 「申し訳ない」と「ごめんなさい」の出現数と出現位置本文に戻る
 
表4<断り>の強さによる分類本文に戻る
分類 分類基準
a) 断りの意思表明 依頼を受ける意志がないことを述べている。 お断りってことで/~を優先させたいと思っています/お受けするのは控えておきます
b) 可能性・能力の否定(断定的表現) 可能性・能力がないことを、断定を緩和する表現を用いずに述べている。 ご案内できません/時間がとれません/無理です
c) 可能性・能力の否定(非断定的表現) 可能性・能力がないことを、文末緩和表現(~んですが/~ようです/~そうもありません/~は難しいです/~感じです等)を用いて述べている。 協力できそうにありません/はっきりお約束できない感じです/案内してあげるのは難しいです

図4 <断り>の強さ本文に戻る

 

(簗 晶子 やなあきこ 東京国際大学付属日本語学校、
大木理恵 おおきりえ 電気通信大学国際交流推進センター、
小松由佳 こまつゆか 東京経済大学)

 
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