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essay200905

【エッセイ】

『日本語ジェンダー辞典』出版にあたって

佐々木瑞枝

2009年3月に経済不況を吹き飛ばすかのように「侍ジャパン」という表現がメディアに躍った。WBC,と略される ワールド・ベースボール・クラシックで野球の国際大会で、日本がアメリカや韓国に勝って優勝したのだ。 アメリカに追いつけ、追い越せで頑張ってきた日本がついにアメリカの国技である野球で世界一になったという男たちへの賛辞が 「侍ジャパン」という言葉に込められている。それは以下の原監督の言葉からも見て取れる。

「世界の強者相手に勝ちました。監督として世界一になれたことは大変誇りに思います。日本野球人を代表した29人が日本力 (にっぽんぢから)を見せつけてくれた」
「侍」は前書きにも書いたように、日本の男性を称えるジェンダー表現の一つである。

『日本語ジェンダー辞典』は2000年に出版された『女と男の日本語辞典』(上巻)と2003年に出版された『女と男の日本語辞典』 (下巻)に加筆修正して合本としたもので、新聞記事などからも新たなものを大分加筆した。

著者としての私の願いは、現代日本社会を見据える「巨視的な視点」で、自由闊達に「日本語の中に潜むジェンダー」をとらえることで、 本辞典には、女性だけではなく、男性たちが「ジェンダー観」によってどれほど定められた倫理観に拘束されているかも表したつもりである。 日本語ジェンダー学会第10回年次大会には、きっと、学会の受付に辞典を並べることができると思う。

こうして、日本語ジェンダー学会と共に、新たな「日本語ジェンダー」に関する辞典が出版できることは望外の喜びである。 ここに日本語ジェンダー学会の皆様に感謝申し上げたい。

2009年5月

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