日本語ジェンダー学会 2013年研究例会

IN ウクライナ

タラス・シェフチェンコ記念キエフ国立大学




ツンドラの大地を超えてキエフへ
 

聖ミハイル修道院
 

シンポジウム 開会前に
左より
ボンダレンコ・イヴァン教授(キエフ国立大学言語学院副学院長)
ヒダシ・ジュディット教授(ブダペスト商科大学)、
佐々木瑞枝教授(武蔵野大学大学院)
坂田東一大使(駐ウクライナ日本国特命全権大使)
アレクサンドルク・ヴァレリー氏(ウクライナ外務省極東部長)
大野浩司氏(在ウクライナ日本国大使館一等書記官)
 

基調講演 佐々木瑞枝先生「ノンバーバルコミュニケーションー日本人の制服の意味」
(後ろの絵は、ウクライナの国民詩人タラス・シェフチェンコです。)
 

基調講演 ジュディット ヒダシ先生
 
 

日本語ジェンダー学会のメンバー ティータイムに


キエフ国立大学 「第5回全ウクライナ国際公開シンポジウム」
分科会「日本語とジェンダー」発表項目
  1階8番教室   
2013年3月22日 
司会:笠原仁子氏
13時20分
  開会の辞 日本語ジェンダー学会会長
レイノルズ秋葉かつえ氏(ハワイ大学教授)
 
13時30分~14時30分
  シンポジウム
 翻訳から見たジェンダー表現の諸相  
   
  コーディネーター 佐々木瑞枝氏(武蔵野大学大学院教授)
   シンポジウム「翻訳から見たジェンダー表現の諸相」は、1962年、日本人では初めてとなるノーベル文学賞を受賞した川端康成の代表作「雪国」をテーマに展開したいと思います。
 雪国には現代日本語からは消えてしまった「ジェンダー表現」が随所に表れます。
1.「「心の底で笑っているでしょう。今笑ってなくっても、きっと後で笑うわ」
2.「あら、どうして帰るの?」
3.「君とさっぱりつきあいたいから、君を口説かないんじゃないか」、

川端康成の日本語の文章が複数の異なる言語間の翻訳(英語、ハンガリー語、ウクライナ語)で、どのようにとらえられているのでしょうか。
ロシアの言語学者ロマーン・ヤーコブソンは翻訳を三分類し、異なる言語間の中での解釈の違い、同一言語の中での異なる語や表現の間の解釈の違い、言語と言語以外の表現法(音楽、絵画、映画など)の間の解釈の違いをあげています。
 異なる言語間での翻訳の違いが、言語から文化の解釈の議論へと発展するに違いありません。 
   
  パネリスト 
  ジュディット・ヒダシ氏(ブタペスト商科大学教授)
矢野安剛氏(早稲田大学名誉教授)
フェドトヴァ・ユーリヤ氏(キエフ国立大学講師・ウクライナ日本語教師会会長)
   
  ① ジュディット・ヒダシ氏(ブタペスト商科大学教授)
「翻訳におけるイノベーションと想像力のインタープレイ」
  原文、起点テキストには、暗示的な、明確に表現されない、目に見えない次元が存在する。これには性に関わるも含まれる。翻訳者は目標言語で最も理想的な解決策を見い出すために非常に大きなインノベーション能力が必要とされていることは想像に難くない。その一方で、読者も、ある文学作品を完全に受容するには大きな想像力が必要とされる。ある翻訳が成功したかどうかを決めるのは、この2つの幸運なインタープレイにかかっているのである。
   
  ② 矢野安剛氏
言語は「rule-governed」である。
  翻訳とはある言語のテキストを異質の言語的、文化的環境の中で「再構築」する作業であり、両語の概念世界の違いにより、付加、削除、置換などが必要になる。たとえば、日本語の「ゼロ照応詞」は英語では代名詞句などとして言語的に顕在化するが、性差表現などは消える。言語はrule-governedなので、言語変化は「規則化」・「一般化」への流れであるというのが持論である。日本語とその英訳の例をいくつか引きながら、議論のタネを提供したい。
   
  ③ フェドトヴァ・ユーリヤ氏
『ウクライナ語版『雪国』における男女会話のジェンダー的特徴』
  本発表では、イワン・ジューブ氏によりウクライナ語に翻訳された、川端康成の『雪国』におけるジェンダー的表現の翻訳上の特徴について検討する。主人公の島村と駒子の別れの際の会話を取り上げ、原文と翻訳に現れるお互いの呼称の仕方、人称(私、おれ、あなた、お前、きさまetc.)の訳し方、「あら、それは違うわよ」のような、男性的、女性的表現を訳し分ける方法、登場人物の話し方やスタイルの訳し方などを分析してみたい。
 
13時30分~14時30分 休憩

司会 笠原仁子氏


 

コーディネーター 佐々木瑞枝先生
 

パネリスト 矢野安剛先生
 

パネリスト フェドトヴァ・ユーリヤ先生
 

パネリスト  ジュディット ヒダシ先生


研究発表
14時40分~15時00分
■村上春樹小説における「女ことば」  レイノルズ秋葉・勝枝氏(ハワイ大学教授)
村上春樹の前期小説の手法は、仮想現実の世界を描くシュールリアリズムが特徴であった。「デジタルな作家」と言われ、現実逃避だと批判されたりもした。しかし、『ノルウエーの森』に至って極端なほどのリアリズムに一転する。そして、たちまち350万部ベストセラーになった。この転換は、小説中の「女ことば」にも顕われた。過剰にステレオタイプ化されていた女ことばが、多様化し、脱性差化されて、現実の言語状況を反映するようになっている。「女ことば」のこうした操作によって特徴づけられた文学的文体の転換は、英語のような言語に翻訳された時に見えなくなってしまう。 
 
15時00分~15時20分
■「銀行員のしごと能力とジェンダー、Banker's work competency and Gender」  河野憲嗣氏(京都大学博士[経済学])
邦銀で働く女性の一般的なイメージ、支店の窓口で働く女性などの実態を紹介しつつ、私の博論テーマでもあるチェックトランケーションという金融の決済システムにも触れたいと考えています。銀行では、支店の窓口だけでなく後方で事務を処理する部署にも女性が多いのが銀行です。こうした事実の背景について考察をするのがひとつのポイントです。ただし、黙々と事務を処理したり笑顔で窓口応対する役割だけを銀行の女性が担っているわけではありません。私の関わっていたチェックトランケーションというプロジェクトでは女性が重要な役割を果たしています。このプロジェクトは10年前からスタートしましたが一筋縄ではすすまない案件でして多くの男性は腰がひけて去ってしまいました。しかし今もこの案件の実現にむけて応援し尽力してくれるのは、銀行で幅をきかせている男性ではなく、むしろ腹のすわっている女性です。こうした事実にも目をむけて、銀行で機能している男性性、女性性について考察したいと考えています。
 
15時20分~15時40分 
■「明治前期文学作品にみる女性の職業」  松井幸子氏(三重大学名誉教授)
明治維新後、女性が働く場と機会は限られており、経済的に自立する事が困難であった。が、現実には貧窮ゆえに働かざるを得なかった女性が多く、ほとんどは芸妓、遊女、女工、女中などで、その置かれた境遇は悲惨なものであった。こうした過去の女性の実態と原因を当時の文学作品などを通して、その人間像を浮き彫りにする。そのことが、現代における職業上の差別不利益を見極めようとするときにも、資すると考えられるからである。
 
★15時40分~15時50分 休憩
 
15時50分~16時10分
■「日本語教科書におけるジェンダー:教科書の日本女性像は現代社会の実態を 伝えているか?」 水本光美氏(北九州市立大学教授) 
国内外で広く使用されている日本語教科書を調査したところ、言語面、日本社会・文化面の双方において、日本の現状を反映しておらず、およそ30年前のジェンダーイデオロギーの影響が残存していることが分かった。本発表では、教科書の中の女ことば、日本女性像、男女の役割分担、などに関する調査結果を、日本社会の実態を調査した最新データと比較することによって、教科書の問題点を提示し今後の課題を検討する。
 
16時10分~16時30分
■「ウクライナ語訳三島由紀夫『サド侯爵夫人』における女性語表現」   江川裕之氏(キエフ国立大学・講師)
 三島は『わが友ヒットラー』は男性を、『サド侯爵夫人』は女性を意識した戯曲作品であると自ら述べている。『サド侯爵夫人』は、ウクライナではドゥビンスキーとダンチェンコが訳し出版されている。それぞれの翻訳においてウクライナ語では女性語表現が可能か、三島の女性を意識した作品は翻訳によって、どうなったかを考察した。一般に動詞過去における女性形語尾、名詞の指小形や愛称形の多用以外には、ウクライナ語では女性語表現はないと考えられがちだが、文の構成や特有の名詞使用などにも注目し、その他の可能性に関して問題提起を行なう。 
 
16時30分~16時45分 
■「日本語の男女差」 ガジェンコ・インナ氏(キエフ国立大学・4年)



レイノルズ秋葉かつえ先生 発表 
 

河野憲嗣氏 発表
 

松井幸子先生 発表
 

水本光美先生 発表
 

分科会 和やかな会場風景
 

江川裕之先生 発表
 

ガジェンコ・インナさん 発表
 
16時45分
閉会の辞 ジュディット・ヒダシ氏(ブタペスト商科大学教授)
日本語ジェンダー学会理事(2013年4月より会長に就任予定)
 

ウクライナ日本語教育セミナー(3月23日)参加者の皆さん
 

晩餐会(日本大使公邸にて)に出席する方は、18時30分開始までに移動
(タクシーor徒歩)
 
キエフ観光

インナさんはキエフのガイドもしてくださいました!ありがとう!!!
 

キエフの街並み
 

キエフ オペラ座 (正式名称:タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立オペラ劇場)
 

聖ソフィア大聖堂(世界遺産)
 

キエフ街歩き
 

キエフ レストランで
 

大雪のキエフ 交通網はダウン 皆歩いて大学へ
 
オデッサへ❥(大雪のキエフから無事脱出)

黒海を背に オデッサ アルカディア海岸
 

オデッサ5 ブリストルホテルで

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今回はシンポジウムのコーディネーター、キエフ国立大学日本語学科講師の斎藤誠氏(日本語ジェンダー学会会員)に大変お世話になりました。
ありがとうございました。

中央が斎藤誠氏


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